ポンコツPC+Linuxでお絵描きをするということ(その2)
オススメは「どのOSでも動くソフト」
さて今回は具体的にどういうソフトがいいのか、という話になります。
ここでは文無しのユーザーがガラクタPCを手に入れ、それでなんとかお金を稼いで成り上がる、という話をしています。というわけでユーザーはまずよわよわのざこざこPCを使うことになるのですが、いつまでもよわよわのざこざこを使い続けることは想定していません。
ある程度稼いだら、もうちょいマシなのに移行するべきです。そうですね、だいたい5年落ちぐらいの中古に。
というわけで、そんなに遠くない時点で引っ越しするわけですから、引っ越し以後に使うソフトが変わるのはあまり望ましくない。
なので、引越し先のPCでも使い続けられるマルチプラットフォーム対応のソフトがいい、という話になります。
LinuxでもWindowsでも動いてくれるグラフィックソフトには、「gimp」「Krita」「pinta」「MyPaint」などがあります。これらの中で一番有名なのはgimpですが、重いしUIに癖がある。それになにより、基本的にgimpは写真の補正や色塗りに使うことが前提のソフトで、線画の描画にはあまり適していません。適しているかどうかというのは使う人間によって違ってくるので、絶対に線画は無理だ、というわけではないのですが、少なくともコミスタとかSAIとかで線画を描くことに慣れてしまった人には、結構な違和感を感じさせるものになっています。
あと、Youtubeで検索かけると「gimpでお絵描き」などという動画が山程ヒットしますが、その大半は適当にブラシでぐちゃぐちゃ線引いて「こんなにたくさんブラシがある。素晴らしいだろ?」ってやってるだけです。まともに線画描いてる動画はかなり少数です。
Linuxでは「使える」Krita
「Krita」は、単に2Dのお絵描きをするだけではなく、アニメーションの製作もできちゃうというスグレモノソフトです。
ただ、Windows版は、少なくとも中の人の環境では軽快に動作するものではありませんでした。板タブレットで線を引く場合、ペンの動作と画面への描画の間に微妙なラグが生まれるのです。なので、コミスタやSAIと同じ感覚で線画を製作することは難しいな、と思いました。
そんな感じなのでLinux版もあんまり期待してなかったんですが、動作させてみると思いの外軽快なんですよね。
ポンコツPCにタブレットを接続して使うと、やっぱりラグは発生するんですが、Core2Duo機上のLinux版と、i7機(Haswell)上のWindows版の処理速度がだいたい同じぐらいに感じました。
でまあ、このコラムではペンタブレットは無視(別途お金出して買わなきゃいけないから)して、マウスで線画を描けと煽っているわけですが、マウスで線画を描くための曲線定規はしっかり搭載されています。そして結構使いやすい。
グラフィックソフトとしては、後で紹介するPikataやMyPaintよりも多機能なので、Windows版の処理速度さえなんとかなれば、引越し後にも使えると思います。Linux版なら多分タブレットを接続したその時からかなり高度なお絵描きができるでしょう。
そうでない場合でも、他のグラフィックソフトで取り込んだ絵を使ってアニメーションを作ることができるので、お絵描きソフトではなくアニメーションソフトとして使い続けてもいいかも知れません。
入手が難しい?Pinta
軽量級と呼ばれるLinuxの多くが「Debian系」に属してます。このDebian系においては、aptというアプリインストール用のシステムが用意されています。
ネットワークに接続されている環境なら、ターミナル画面を開いて「apt install なんちゃら」という感じに入力すると、なんちゃらという名前のソフトがインストールされるのです。
ところが、「Pinta」の場合、aptでインストールできない場合があるのです。
インストールできるディストリビューションもないことはないのですが、その場合バージョンが古かったりします。
これはPintaそのものが、aptからFLATPAKなどと言った新しいパッケージ管理システムに移行したためです。新バージョンはFLATPAKなどのみの対応となるので、aptではインストールできません。できたとしても、移行前の古いバージョンになってしまうのです。
アプリそのものは、Kritaより軽いので、使えそうな気がしないでもないのですが、入手方法が安定するまでは、あまり他人にオススメはできないように思われます。
なお、Windows版も存在するので、操作性がどうかはそっちで確認できます。
羊の皮を被っていた「MyPaint」
世の中には、「子供向けお絵描きソフト」と呼ばれるものがあります。レイヤー機能も複雑な定規ツールもないのですが、その代わりスタンプ(押すと音が出たりします)が結構充実していて、小学校入学前の子供でもお絵描きが楽しめる、ということになっています。
ここで言ってる「子供」というのはあくまでも小学校入学前の子であり、小学生以降の子には正直オススメはできません。小学校に入ってれば、レイヤーぐらい使いこなせると思うのです。
Windowsに標準添付されている「MSPaint」も、同じ理由で小学生のお絵描きには適しているとは言えないのです。
で、「MyPaint」ですが、見た目がMSPaintっぽいし、標準設定だとなんだか変な背景画があって、「ああこれは使い物にならないなんちゃってお絵描きソフトだな」と思っちゃうのですが、これが大間違いでした。
変な壁紙は、設定一つで解除できます。また、ちゃんとレイヤー機能にも対応していたし、曲線定規もあったのです。
でもって、見た目通りの軽さはそのままですから、これはもうむちゃくちゃ使えるソフトだと言わざるを得ません。
ほとんどすべてのDebian系Linuxにおいて「apt install mypaint」でインストールできてしまうというあたりもポイント高めです。
というわけで、次回はこのMyPaintを使って、ポンコツPCでのお絵描き術を解説していくことにします。
番外:メディバンペイントを無理やりLinux上で使う
メディバンペイントはWindows用のソフトですが、「レイヤーが使える」「曲線定規がある」「そこそこ軽い」の三拍子が揃っているスグレモノです。
これがLinux上でも使えれば、WindowsやMacOSに移行した時に、そのまま使い続けられますね。ちょっと操作性が違いますが、スマホ用もあるので、Linux上でも動けば、ほとんどすべてのプラットフォームでデータを共有できる環境を作れます。
で、Linux上ですが、実は動かすことができちゃいます。
Linuxには、WineというWindowsアプリを動かすことのできる環境が用意されています。すべてのWindowsアプリが動作するわけではありませんが、多くのLinuxディストリビューションで、Wineを使ってメディバンペイントを動かすことが可能なのです。素晴らしいことに、Wine経由でもそんなに処理速度は落ちません。
ただ、Wineはそのままインストールすると、あちこちで文字化けを起こすことが多いので、継続的に使うためには文字化け対策をしなければなりません。このあたり、ちょっと面倒です。