笠間市付近のおとーさんのためのLinux入門(2)
そもそもLinuxってなんでしょうか?
子どもたちは全く知らないと思いますが、おとーさんの中にはかつてMS-DOSと呼ばれるシステムがあったことをかすかに覚えている方もいるでしょう。
プログラムはパソコンの中核であるCPUというICチップとコマンドのやり取りを行い、ネットワークやディスクとの間でデータのやり取りをしています。これらの機能を個別のプログラムに実装していくのは手間だし無駄もある、ということで、これらを専門に行うプログラムを用意し、一般的なプログラムはこちらを通して各種の処理を行う、という流れになりました。
MS-DOSというのは、「マイクロソフトディスクオペレーティングシステム」の略で、主としてディスクに関するデータのやり取りを、個々のプログラムに対して行うプログラムでした。このようなプログラムのことを、「OS」または「基本ソフト」と言います。
このMS-DOSが提供されたおかげで、パソコンのソフト開発はずいぶん楽になったのですが、問題点もありました。MS-DOS上では、一度にひとつのプログラムしか実行できなかったのです。
今でも、ワープロで作った文章を、表計算ソフトに貼り付ける、といったことは普通に行われます。MS-DOSにはこれができなかったのです。
しかし、MS-DOSよりも先に作られたのにも関わらず、プログラムの同時起動が可能だったOSがありました。UNIXと言います。
UNIXは便利でしたが、基本的にワークステーションと呼ばれる当時のパソコンよりはワンランク上の高価なコンピュータでしか動作しませんでした。なので、安いパソコンでも動作する、UNIX互換のOSが求められました。
こうした需要に応え、リーナス・トーバルズという若者が作ったのが、パソコン上で動作するUNIXのような新しいOSです。これが後にLinuxと呼ばれます。リーナスさんの名前とUNIXとをかけ合わせたネーミングです。
元々が高いワークステーションを買えない貧乏人の需要に応えた代物であったため、Linuxはタダで配布されました。今までの説明を呼んできた方は、MS-DOSより高機能でタダなんだから、瞬時にMS-DOSのシェアを奪えたんじゃないかな、と考えたかも知れません。でも実際にはそうはならなかったのです。
その理由の一つは、Linuxは「i386」と呼ばれたCPU上でしか動作しなかったということにあります。いわゆる「パソコン」のCPUは、電卓用のICから発展してきたものです。Linuxが開発された1990年代の前半段階では、一般向けのパソコンのCPUの主流は「80286」で、「i386」はごく一部の高級機にしか搭載されていませんでした。秋葉原の安売り店を通じて買った場合、80286搭載機は20万円代でしたが、i386搭載機はその倍近くしました。
もう一つの理由は、MS-DOSの開発元のマイクロソフトも、同時に複数のプログラムを起動できる新しいOSを作っていたということです。マイクロソフトは、ディスプレイ上に複数の「窓」を表示し、その中でMS-DOSプログラムを実行できるシステムを作り、それに「Windows」という名を付けました。Windowsは、バージョン2までは実験的性格の強い、実用性が薄いものでしたが、バージョン3.0でそこそこ使えるようになり、3.1で一通り合格点を与えられるレベルになりました。そして、ここがちょっと肝心なのですが、Windowsは機能が限定されますが、80286機でも動作したのです。
Windowsは商用OSだったので、細かな設定等はできるだけ自動化される方向にまとめられていました。インストール(フロッピーディスクを何枚も出し入れするという今から考えると苦行そのものですが)さえしてしまえば、一応グラフィカルなデスクトップ画面が表示されたのです。
しかし当時のLinuxはそうはいきません。Linux単体をインストールして起動しても、表示されるのは黒字に白の点滅だけです。Windowsのようなグラフィカルな画面を表示させるためには、ここからさらにX-Windowと呼ばれるシステムを導入しなければなりませんでした。これの基本設定は、使っているグラフィックチップごとに適切な値を設定ファイルに書き込む、というもので、異様に難易度が高かったのです。
この、「ある程度使い物になるようにするためにはとんでもない努力を重ねなければならない」という特徴があったために、Linuxは一般ユーザーには受け入れられませんでした。Linuxの開発者は、普通の人でも使えるように改良を重ねて、ここ数年になってようやくある程度成果が出てきた感じなのですが、軽量をうたったディストリビューションの中には、インストール直後に日本語入力が即可能にならないものが結構あります。というか、日本語入力環境の構築の前に、主要メニュー項目を日本語で表示させるための作業が必要になるケースすらあるのです。
ただ、先程書いたように、X-Windowの設定ファイルをユーザーが書かされていた時代に比べればだいぶマシになりました。また、GoogleChromeを筆頭に、WindowsでもLinuxでも動くアプリもかなり多くなったため、最初のそんなに高くないハードルを超えれば、Linuxは普通に使えるようになっています。