緊急連載:高齢者にスマホを使ってもらうためには?(1)

高齢者もスマホへの乗り換えが必要

実は中の人、結構長く「パソコン雑誌」で記事書いてた過去があります。

パソコン雑誌の記事ってのはだいたいが「使いこなし」や「高速化テクニック」などに収斂していきます。なぜかというと、そういう記事の方が読者アンケートでの受けがいいので、自然と編集さんがそういうの書いてとライターにネタフリをするからです。

でまあ頼まれたから書くのですが、その内容ってのはいつも似たようなものになってしまうのですね。書いてる方がマンネリだよなあ、と思っているのに雑誌は売れる。これはつまり雑誌の読者は同じことを何度言われてもすぐ忘れちゃうからじゃないか、とか思うようになりました。

で、これが肝心なのですが、こういうことをやっていたのが四半世紀ほど前。そんでもって当時のメイン読者層が40代中盤から50代半ば。つまり「団塊の世代」が中心ということになるのです。

この人たち、今は「スマホが使えない」と軽いパニックを起こしていますよね。

中には60年遅れの中二病(ひょっとしたら治ってなかったのかも)を発症して、「自分なんかね、ずっとガラケーですよ」と半ば自虐のこもったセリフをドヤ顔で語る人もいましたが、2020年代にはいわゆるガラケーの土台になってた3G通信が停波になることが確定しました。もうこの技は長持ちしません。

高齢者は嫌でもスマホに移行しないと電話もかけられないご時世に突入するわけです。

高齢者がスマホを使えない理由

さてその高齢者がスマホを使えない理由ですが、中の人が漠然と考えているのは「この人たちボタンがないと機械操作できないんでは?」ということです。

この高齢者たちは若い頃からパソコンが使えなかった(あるいは上達しなかった)のですが、その理由はデジタルデバイスの操作法の基礎というのを理解できなかったからではないか、と思えるのです。

彼らの多くは、企業戦士として社内のビジネスホンを華麗に使いこなしていました。中の人はパソコン・スマホは息をするように使えますが、このビジネスホンというのが超苦手です。元々電話が嫌いなのですが、ほとんど似たようなボタンが並んでいるので、どれがどういう機能を持っているか理解しにくかったからです。しかも事務所によって同じ場所にあるボタンの機能が違っていたりする。

これ要するに、中の人は同じコマンドボタンは同じような場所に置いてなければ使えないし、機能についてはそれを端的に表現したアイコンがないと使えない状態になっていた、ということなんですね。まとめて言っちゃうと、「パソコン脳」になっていたわけです。

なのでスマホを使えないという高齢者は、「ビジネスホン脳」、言い換えると「ボタン脳」になっていたのではないかと。

つまり、ボタンの位置により呼び出せる機能というのを記憶するタイプの脳になっていた、と。だから位置が変わったり操作パネルが書き換えられてしまうことに対応しにくい、と。

この推論が正しいのなら、「ボタン脳」である高齢者がスマホを使えるようにする方法、というのがある程度見えてきます。

第一団塊(意図的な誤字):画面の切り替えとアイコンを減らせ

スマホは使えないけれどビジネスホンは使えるタイプの人にスマホを使えるようにするには、スマホの操作性をビジネスホンに近づけちゃえばいい、ということになります。

スマホの初期画面にはいくつかのアイコンが並んでいます。これをタップすればそれぞれの機能が起動する、というのはビジネスホン型の人にも理解しやすいでしょう。

ただ、アイコンの数が多すぎて、別機能を呼び出すためには画面を切り替えなければならなくなると話は別です。ビジネスホンに「操作画面の書き換え」などという機能はありません。ですから、画面の切り替えというのをなくす必要があります。

画面の切り替えをなくすというのは、画面上のアイコンの数を減らすというのとイコールです。

キャリアで買ったスマホの場合、変な機能がこれでもかと詰め込まれ、アイコンが数画面にわたって散りばめられています。ビジネスホン型の人は、これを見ると顔面蒼白になるのかも知れません。

ただキャリアが詰め込んできた機能は、どのユーザーにとっても絶対必要なのかというとそうでもなく、むしろ不要である場合が多いのです。

ですから、ビジネスホン型であるところの高齢者にスマホを買ってあげたご家族は、まずこのアイコンを削除する作業を行うべきかと思います。

極端に言えば、残すのは「電話」と「ブラウザ」「カメラ」だけで十分だろうと思えます。

スマホは後からアプリをインストールして機能を追加できます。だから機能がよくわかんなければ必要最小限のものまで減らす、というわけです。

なお、このカスタマイズを行ったご家族は、第二画面に「設定」アイコンを移動しておくことをお勧めします。もちろん、実際にスマホを使う高齢者に対して、「第二画面が存在する」などという余計なことを言う必要はありません。「画面がいつもと違うものになっちゃったんだけど」と言ってきた時に、戻し方(ちょっと画面をスワイプするだけですが)を教えてあげればいいと思います。

第二団塊:指で操作させない

スマホの操作が苦手だ、とこぼす高齢者の方に話を聞くと、「あのタップというのがうまくできない」という答えが返ってくることがよくあります。

年配者の乾燥した指先では、タッチパネルが反応しにくいというのも理由の一つでしょうが、押しごたえのない平面な「ボタン」を操作するのがどうにも気持ち悪い、という人もいます。

タップミスをなくし、なおかつ「気持ち悪い」操作感を解消するには、タッチペンを使用するのが有効です。

タッチペンは、安いものならそこらの100均で買えます。

よくものをなくしてしまう方なら100均ペンでいいし、どうせ買うならそれなりのものを(案外こういう高齢者の方は多いかと)という方には、量販店で売っているペンを勧めればいいでしょう。

実は高いペンというのは、スマホでお絵かきする場合にその真価を発揮するようになっています。だから画面上のボタンをタップするだけなら100均のペンでも何の問題もないのです。ただしそう言って安いペンを押し付けようとすると立腹する高齢者も多い(スマホを避けている人は特に)ので、無理強いはいけません。

スマホの中核機能(だと思われている)「電話をかける」ことに関しては、これで対策は万全かと思います。画面下の固定ゾーンに置かれた「電話」のアイコンをタップし、切り替わった画面でダイヤルボタンを押し、発信ボタンを押す。画面切り替わりが1回ありますが、まあ許容範囲かと思われます。さすがにダイヤルボタン画面を見てパニックを起こす人はいないでしょう。

先に紹介した「最小限までアイコンを減らしたスマホ」の場合、他にカメラとブラウザのアイコンが残っています。このうちカメラは、興味を持つ人と持たない人の両極端に分かれます。興味を持った人はほっといてもどんどん撮影するようになりますから、最初の1~2回だけ操作を教えれば十分でしょう。

次はブラウザです。これも人によっては「勝手に使う」タイプのアプリです。

現代のブラウザは、何らかの検索ワードを入力し、それに対応する情報を引き出す、というシステムになっています。もとからそういう側面がありましたが、Googleという企業が世界を制覇してからその傾向がさらに強まりました。

というわけで、ブラウザを使いたいなら何らかの検索ワードを入力しなければならないのですが、ここでビジネスホン型の人は壁にぶち当たります。

彼らは物理キーがないと機械の操作ができなくなるのですが、物理キーの数が多くなり過ぎるとまたパニックを起こすのです。いわゆるキーボードアレルギーというやつですね。

物理キーのあるキーボードでもこれですから、スマホで使われるソフトウェアキーボードなんか、使おうという気を起こすはすがありません。見た瞬間に食わず嫌いを発症してスマホをぶん投げてしまうでしょう。

ですがスマホメーカーはそんなことは先刻ご承知でした。ソフトウェアキーボードなどという呪術的なシステムを使わなくても、ブラウザを使えるようにするシステムをちゃんと開発していたのです。

要するに、音声入力のことなんですけどね。

というわけで、「情報を検索したい場合はスマホに向かって話しかけてね」と教えてあげれば、ブラウザの利用はOKです。多分メインの利用は自分の好みのジャンルの動画を見ることでしょうから、これでスマホをテレビ代わりに使えるようにもなるわけです。

なお、音声入力だけのブラウザ操作を教えると、本人が恥ずかしいと思うフレーズを検索キーワードに設定しにくくなります。高齢者の場合案外検索キーワードに恥ずかしい言葉を入力してしまうことが多く、検索履歴が汚染されてメンテナンス担当者やご家族にこの世の闇を見せてしまうケースが結構あるのですが、音声入力にすればそれは多少(?)抑えられるんじゃないでしょうか。

以下、続きます。