OSを選んでいこう(実践編その1)
Linuxでも「軽量」じゃなきゃ動かない
さて実際にガラクタPCでも実用的な速度で動いてくれそうなLinuxディストリビューションを選んでいくことにします。
ブラウザの検索窓に、「軽量Linux」と入力すれば、いろんなサイトでお勧めしているディストリビューションを参照できるでしょう。Youtubeで検索すると実際にインストールして動かしたところまで確認できるから、より便利かも知れません。
それらのサイトで紹介されている「定番」としては、AntiXとかQ4OSとか、RaspbianOSとか、Xubuntuなんかがあります。ちょっと処理速度に余裕があれば、Linux Mintもありよ、ってところでしょう。
「軽量」という前提を入れなければ、Ubuntuというのがイチオシになります。ですがこれが使っているデスクトップ環境って、Windows並に重いんですね。トーシロにとってWindowsに対するメリットは、「タダだ」ぐらいしかない(スキルが高いユーザーにとってはもっとメリットあります)ので、ここでは除外します。
あと、PuppyLinuxとその仲間たちというディストリビューションが軽いと評判なのですが、基本USBメモリに入れて使うタイプなのでこれは今回オススメから外したいと思います。なんでかっていうと動画編集をする場合、USBから起動するシステムだとサイズの大きなデータファイルの扱いが面倒になるからです。
さて、次からは実際にいじってみた感想です。
AntiXとMK-Linux
まずAntiXです。これは確かに軽いのですが、ちょっとメニューを開くとずらずらと英語が表示されてしまいます。PCに苦手意識を持っている人はこの時点でドン引きです。また、標準では日本語入力ができません。ワープロ・表計算その他も付属してますが、全部初期状態では英語版です。ちょいと工夫すると日本語化することはできるのですが、面倒なことには変わりありません。まあ、コンテンツ製作機に、ワープロはともかく表計算がどれだけ必要なのか、という根本的な疑問というのもわいてくるんで、どうでもいいことといえばそうかも知れません。
追記:メニューが英語だらけになっていたのは、ライブCDを英語で立ち上げ、そこから日本語版をインストールしたため、ということがわかりました。ライブCDを日本語で立ち上げてインストールした場合、メニューはすっきり日本語になります。ただワープロは英語版でした。
でも動画のタイトルとか入力できなくなるので、初期段階で日本語入力できないのは痛いですね。
一応設定変更すれば日本語入力は可能なのですが、困ったことにこれが非常に面倒なんです。テキストベースの設定ファイルをいじることになるんで、Windowsしか触ったことのない人には「なんだこれは」となることでしょう。かろうじてMS-DOSの設定をいじった経験のある人が、なるほどあんな感じなんだな、と思う程度でしょうか。
というわけでAntiXはオススメからは外すことにします。ただし、AntiXの兄弟版として、MK-Linuxというのが配布されてます。これは初期状態から日本語が使えますし、メニューの英語も少なめなんで、オススメに入れておきましょう。のちほどコンテンツ製作機の具体的な作り方を解説します。
RaspbianOS
次はRaspbianです。これは剥き出しのちっちゃい基盤型PCとして売り出されている「ラズベリーパイ」向けのLinuxです。ラズベリーパイは、教育分野で使うことを前提としたシステムとして開発されています。つまりChromebookのライバルなんですが、安さを追求しすぎた結果ケースすらない剥き出しの基盤で売り出してしまったことがまずかったのでしょう。GIGAスクール構想においては完全に無視されています。ただマニアの間では大好評で、通販でもなかなか買えないという状態が続いています。
品不足のおかげで廉価版のChromebookと同レベルの価格帯になってしまっていますから、今ではこっちもおすすめできないかなと。同じ値段ならスイッチぽんで使えるほうがずっといいと思う人の方が多数派でしょうから。しかしこういうのが好きでたまらない人にとってはまだまだ「安い」商品でしょう。
で、RaspbianOSというのは、このラズベリーパイ用のOSなんですが、Windows機などでも動くバージョンが開発され、提供されています。
教育に使うんだという目的のもとにパッケージングされているし、メニューも英語少なめなんで、オススメできるかな、とちょっと思ってしまいます。
なにより「Scratch」というマウスだけでプログラミングができちゃうという言語(?)が搭載されてるんで、オススメしたい気持ちが強まっちゃうんですよね。知ってる人に言わせれば、「そんなもん他のシステムでも後からインストールできるし、だいたいScratchはWeb上でもサービス提供されてるだろ」ってなるんですけど。
とまあ、動かす前にはRaspbianOSに対する期待がぐいぐい高まっちゃうんですが、いざインストールするといろんなところで引っかかる。必要なアプリがインストールできない。
Linuxの場合、ほぼすべてのアプリをネットワーク経由でインストールできます。このため「どこに何があるか」という一種の宝の地図がシステムの中に組み込まれているんですが、RaspbianOSの場合、この地図のバージョンが古いんです。なのでリストからこれよさそうだなと思って「このお宝くれ」とやっても「そんなの知らんがな」とスルーされてしまうことが結構あります。これも対策は可能なんですが、対策してインストールしてもメニューに起動アイコンが表示されない場合とかもあるんです。
RaspbianOSは、Linuxの世界では天下の副将軍ぐらいに権威があってメジャーな「Debian」というディストリビューションから派生したシステムです。このDebianは2021年8月にメジャーバージョンアップ(Windowsで言えば10から11に変わったぐらいの変化)がされたのですが、RaspbianOSは前のバージョンをベースにしているのです。現在RaspbianOSで生じるトラブルの結構な部分が、「古いバージョンをベースにしてる」ことから生じていると思われるので、RaspbianOSがDebianの最新バージョンに対応するまでは「待ち」の姿勢でいた方がいいでしょう。
長くなってきたので続きは次回。